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「コーヒーを出すこと」が「インターン」と呼ばれる時代に

2026年8月23日

Bloombergが書いたのは英国のこと。あなたが中国で、日本で、韓国で、アメリカで見ているのは、同じ事の違う版だ。この一篇は、その一杯のコーヒーから始めて、これから十年、あなたのどんな部分が本当に大事になるのか、というところまで、糸をたどる。

Danny Monksは21歳、英国ボーンマス大学の学生だ。去年の夏、彼は数ヶ月かけて夏のバイトを探し、最終的にロンドンのオーストラリア風ブランチ店 Daisy Green で働くことになった。コーヒーを出し、注文をとり、テーブルを片づける。時給は英国の法定最低賃金、£12.21。かつて私たちがただの「夏のバイト」と呼んでいたその仕事を、募集要項は「インターンシップ」と呼んでいた。Monksは自分がしている取引を、はっきり分かっていた。彼の言葉は、こうだ。「どうせ卒業したあとも、レストランかカフェで働くことになりそうだ。だったらこれに応募して、履歴書に summer internship の一行だけでも書ければいい、と思った。」

これは一軒のカフェの気の利いたマーケティングではない。Bloombergの記事の裏には、硬い数字がある。英国では昨年、59%の雇用主が「インターンシップ」を提供したと答えた。2018年は48%だった。ロンドンは80%。理由は雇用主が急にやさしくなったからではない。応募者が求人よりずっと多いからだ。ある雇用弁護士はこう言う。この採用逼迫のもとでは、雇用主は「もう少し選り好みしていい」立場にいる、と。

だが本当に胸が沈むのは、その裏側にあるもうひとつの数字のほうだ。英国では2025年末の時点で、16歳から24歳の若者のうち、有給の仕事に就いていたのはおよそ半分だけだった。2026年3月、英国全国の新卒向け求人数は10,667件。前年比マイナス35%。十年前のピークは55,000件だった。前の世代が当然のように手にしていた「最初の仕事」が、消えつつある。

英国の労働市場:新卒向け入門ポスト vs インターンシップ (2022 vs 2026、100万求人あたり)
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新卒向け入門ポスト インターンシップ

過去四年間、英国の新卒向け入門ポストは大きく縮小した一方で、インターンシップの求人はほぼ横ばいで推移している。これが、サービス業の仕事に「インターンシップ」というラベルが貼り替えられている現象の背後にある力だ。図中の数値は概算で、変化の方向を伝えるためのもの。

データ:Indeed(Bloomberg 2026-08-21 報道より)

そしてこれは英国だけの話ではない。中国で見える「考公」「考研」の熱。アメリカで見える side hustle と gig work の拡大。日本と韓国で見える「独立の遅れ」、二十代後半になっても親の家に残っている若者たち。これらは全部、同じ事の違う版だ。工業化後期に入ったすべての先進経済が同時に、ひとつの新しい現実に向き合っている。「標準的な最初の仕事」の数が、卒業してくる若者の数に対して、ずっと少ないのだ。どの国もまだ答えを見つけていない。どの国も、その場しのぎで組み立てている最中だ。

なぜこうなったのか。三つの力が同時に働いている。ひとつめ、この二十年、ほとんどの主要経済で大学教育が拡大した。卒業生の数は増えたが、経済が用意できる「標準的な最初の仕事」の数は追いついていない。ふたつめ、AIが、これまでジュニア社員に任されていた「単純だが時間のかかる」仕事を、静かに引き取り始めている。データを整理する、初稿を書く、基本的な分析を回す、よくある問い合わせをさばく。Bloombergの記事もその点を直接指摘している。みっつめ、この二つが重なると、資格インフレが起きる。縮んだ入門ポストをひとつ勝ち取るために提出しなければならないものは、十年前の応募者よりずっと重くなっている。

二十代前半のあなたが、ここまで読んで胸が少し重くなったなら、それはたぶん正しい反応だ。あなたのまわりで起きていることは、あなたが弱いからでも、努力が足りないからでもない。構造が変わったのだ。 二週間前、私たちはこのサイトで、ハーバードの大学三年生がBloombergに語ったこんな一文を紹介した。「『学ぶこと自体のために学ぶ』が、将来の仕事の可能性より重いとは、私には思えない。」 あれは弱さではない。あれは、自分がいる市場に対する、冷静な判断だ。彼女は間違っていなかった。

だが、ここに立ち止まって見ておきたい落とし穴がある。扉が狭くなったとき、本能的な反応は「その狭い扉を、もっと強く押す」だ。もっと資格を、もっとインターンを、もっと完璧なGPAを、もっと見栄えのする履歴書を。ハーバードがこの夏、規則で押さえようとしたのは、まさにこの本能を最後まで走らせた先の光景だった。世界でもっとも学力の高い若者たちの一群が、自分自身を「好奇心を持たないように、リスクを取らないように、将来に加点されないことは学ばないように」訓練してしまった。狭い扉をより強く押しても、扉は広がらない。

では、別のやり方は何か。Bloombergの同じ記事のなかに、LinkedInのキャリア研究者の一文が、さりげなく置かれている。彼女は言う。次の十年で本当に前に出る人は、「もっとも伝統的に資格のある」人たちではなく、「学びつづけ、変化に適応し、機会が現れた瞬間にそれをつかめる」人たちだ、と。この主張自体は新しくない。新しいのは、この瞬間にそれが持つ具体性だ。誰もが同じ形の履歴書で競うのではなく、市場がまだ「ラベルの貼り方」を知らない人になる。それが道だ。

カメラをいちばん遠くまで引いてみよう。「安定した入門ポストが大規模に消える」のは、歴史上これが初めてではない。産業革命は何百年もの手工業徒弟制を解体した。戦後のベビーブームは1960年代の若者を、前代未聞の求職競争のなかに押し込んだ。2008年の金融危機は、アメリカの一世代分の大学卒業生の最初の仕事を、何年も遅らせた。そのつど、当時は道が閉じたように見えた。そのつど、後になってみて遠くまで行ったのは、「当時いちばん熱い業界を当てた人」ではなかった。学びつづけた人、何か具体的なものに本気で興味を持ちつづけた人、初心者に戻ることを恐れなかった人たちだった。この事実は三百年、変わっていない。AIによっても、変わらない。

だから、今夜この一篇を閉じる前に、自分にひとつだけ問うとしたら、たぶんこれだ。「この一年で、私の中に、履歴書の一行にはならないもの、何が育っただろうか?」 次の仕事のためのものではなく、次の十年、二十年のためのもの。市場が静かに「大事じゃなくなった」と判定しつつあるのは、「インターン経験あり」 の一行だ。市場が静かに「もっと大事になる」と判定しつつあるのは、学びつづける人、慣れない場所で崩れずに立てる人、誰も次の一歩を教えてくれないときに自分で考え出せる人。その人には、あなたは今日から、なっていける。「インターン」という肩書きを誰かに与えてもらう必要は、ない。

出典: Maddie Parker · Irina Anghel · Bloomberg

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