G タンパク質共役受容体 (GPCR)
細胞の表面に並ぶ、非常に大きな受容体ファミリー。適切な化学物質が結合すると、細胞内で連鎖的な信号伝達が起きる。ヒトはおよそ 800 種類の GPCR を持ち、視覚、嗅覚、心拍、気分など、無数の機能に関わっている。既存の承認薬のうち、およそ三分の一はこの受容体を介して働く。
用語集
Luminis の記事に登場する科学、心理、教育の用語について、短くて信頼できる説明をここにまとめている。文中で見慣れない言葉に出会ったら、こちらに寄って一目確かめ、そのまま読み進めればいい。
生物学と医学
細胞の表面に並ぶ、非常に大きな受容体ファミリー。適切な化学物質が結合すると、細胞内で連鎖的な信号伝達が起きる。ヒトはおよそ 800 種類の GPCR を持ち、視覚、嗅覚、心拍、気分など、無数の機能に関わっている。既存の承認薬のうち、およそ三分の一はこの受容体を介して働く。
二重特異性抗体で、商品名は Hemlibra。片方の腕で凝固因子 IX を、もう片方で第 X 因子をつかみ、両者を引き寄せる。血友病 A の患者において欠けている第 VIII 因子の「橋渡し」役を代行する仕組みだ。2017 年に米 FDA が承認、以後 100 以上の国で承認され、3 万人を超える患者が使ってきた。
アメリカを代表する生物医学の賞で、しばしば「アメリカのノーベル賞」と呼ばれる。基礎医学研究賞、Lasker~DeBakey 臨床医学研究賞、Lasker~Bloomberg 公益賞の三部門がある。1942 年、Albert と Mary Lasker 夫妻によって創設され、各部門の賞金は 25 万ドル。受賞者のうち、のちにノーベル生理学・医学賞を受ける人の比率は、ふしぎなほど高い。
血液中に存在するタンパク質の一群で、傷口で血液を凝固させ、出血を止める役割を担う。ドミノのように、決まった順番で互いを活性化する必要があり、途中のどれか一つが欠けると連鎖全体が止まり、出血はとまらない。よく登場するのは第 VIII、IX、X の各因子だ。
遺伝性の出血性疾患。血液凝固に必要なタンパク質の一つ、第 VIII 因子を十分に作れなくする変異が原因で、血が正常に固まらなくなる。小さな衝撃でも繰り返し出血し、年月とともに特に関節に負担がかかり、慢性的な痛みや可動域の制限をもたらす。ほとんどが男性に発症し、母系を通じて遺伝する。
睡眠科学
REM は Rapid Eye Movement (急速眼球運動) の略。睡眠のなかで最も夢が鮮明になる段階で、閉じたまぶたの下で眼球がすばやく動き、脳活動は覚醒に近づく。同時に、体の多くの筋肉は一時的にオフにされていて、夢を体で演じてしまわないようになっている。一晩のうちに数回訪れ、朝方に近づくほど長くなる。
小さな神経ペプチドで、視床下部の一群の細胞が作る。別名は hypocretin。主な役割は、覚醒状態を保つこと。これを作る細胞が失われると、人は起きていられなくなり、日中でも突然 REM 睡眠が割り込んでくる。ナルコレプシーの中心的なメカニズムだ。ギリシャ語で「食欲」を意味する orexis から名づけられた。当初は摂食を司ると考えられていたためだ。
神経疾患の一つで、日中に強烈な眠気に襲われ、しばしば不適切な場面で突然眠り込んでしまう。大多数のタイプ 1 は、視床下部でオレキシンを作る細胞が失われることで起こる。しばしば伴うのが「情動脱力発作 (cataplexy)」で、強い感情 (特に笑い) をきっかけに、突然筋力が抜ける症状だ。生涯付き合う病だが、生活リズムを保つのに役立つ薬がいくつも存在する。
突然、短時間だけ筋力が抜けてしまう発作で、強い感情、とりわけ大笑いがきっかけになる。人は倒れることもあるが、意識ははっきりしていて、聞くことも見ることもできる。数秒から数分続く。ナルコレプシーの代表的な随伴症状で、睡眠を調節する仕組みの乱れを示唆する。
神経科学
進行性の神経変性疾患。脳の中の「黒質 (substantia nigra)」と呼ばれる小さな領域で、ドーパミンを作る細胞がすこしずつ死んでいく。その結果、震え、こわばり、動作の遅さ、バランスの困難が起き、進行すると認知や気分にも影響する。俳優の Michael J. Fox は若年性のパーキンソン病患者で、29 歳で診断を受け、その後この病の最も影響力ある公的な提唱者になった。
脳の深部にある、アーモンドほどの小さな領域だが、担っている仕事はきわめて多い。空腹、渇き、体温、性欲、ホルモンの分泌、そして睡眠と覚醒の切り替え。身体の自動的な調節を束ねる、中央管制室のような場所だ。オレキシンを作る細胞群も、ここに住んでいる。
共通の特徴として、脳 (あるいは脊髄) の神経細胞が少しずつ死んでいく、あるいは機能を失っていく病の一群を指す。しかも、いまの医学ではそれを元に戻すことができない。パーキンソン病、アルツハイマー病 (認知症のなかで最も多い型)、ALS (筋萎縮性側索硬化症) などがこの仲間だ。発症はしばしば静かでゆっくりで、ある能力の目に見える衰えとして、はじめて気づかれる。
脳の奥にある、扁桃 (アーモンド) 型の一対の構造で、恐怖と強い情動の処理を担っている。反応が速く、「考える」より先に燃え上がることが多い。心理学の研究では、いま感じていることを言葉にして口に出すこと (例:「私は今、怒っている」) が、扁桃体の活動をはっきりと落ち着かせることが分かっている。「感情に名前をつける」動きが効くのは、これが神経の側の理由だ。
心理学
シンプルな最初のチェック用ツール。子ども (あるいは大人) が急に対処しきれなくなったとき、四つの問いを順に確かめる。四文字の頭文字で、Hungry (お腹が空いた) / Angry (怒っている) / Lonely (さみしい) / Tired (疲れている)。満たされていない一つを見つけ、まずそれを埋める。それから、ほかの話に入る。多くの場合、行動は自然と落ち着いていく。
ひとつの動きだ。いま感じているものを、具体的な言葉に置き換えて口に出す。「私は今、怒っている」。「がっかりした気持ちだ」。脳画像の研究では、感情を名づけるだけで扁桃体の活動が測定可能なほど落ち着き、感情の強さもひと段階和らぐことが分かっている。子どもには特に有効だ。自分のなかで何が起きているのか、まだよく分からないことが多いからだ。
つらい感情の音量をすばやく下げるための心の動きの一群。回避、否認、他人への責任転嫁、別のことで気をそらす、といったもの。短期的には、羞恥や罪悪感、悲しみに押しつぶされないよう守ってくれる。長い目で見ると、これらが唯一のやり方になってしまうと、その感情そのものを扱う機会を失ってしまう。
教育と学び
Dorie Clark が名づけたコミュニケーションの動きで、Dolly Parton が Barbara Walters に返した名回答から取られている。相手がラベルを使ってあなたを小さく置こうとしたとき (「若すぎる」「経験がない」「ただの教師でしょう」)、そのラベルを否定するのではなく、いったん引き受けたうえで、それが何を意味するかを自分の言葉で書き直す。誇りは守られ、言葉の定義権はあなたのもとに戻ってくる。
教育心理学の概念で、学び手がある考えを噛みしめている、まだ飲み込んでいない、しかし飲み込める、と分かっている、その瞬間のこと。心地よくはないし、遅いし、しばしば投げ出したくなる。だがまさにこの格闘こそが、「答えを知っている」を「なぜそうなるのかが分かる」に変える。あまりに早く答えを渡してしまう動き (AI の使い方の一部を含む) は、この格闘をこっそり奪っている。
人工知能
AI によって生成された画像、音声、動画で、実在の人物をそっくり模倣できる。検出のためのツールも進歩を続けているが、たいていの場合、作る側に一歩遅れる。「これはどこから来たのか」「元の素材はどこにあるのか」と問い直せる力は、日々を生きるうえでますます大切な技能になっている。